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がん知識の森

詐欺医療やトンデモ医療

Twitterを始めていろんな情報が見れるようになって勉強になっています。

エビデンスがない治療をしているクリニックはトンデモない、詐欺だ!と言って啓発している投稿もよく見かけます。私自身もそう思います。
とある医師が、患者さんがインチキクリニックに行こうとしたらどうしますか?とアンケートを取っていました。とても140字では投稿できないので、こちらに書かせてもらいます。

①まず、最善と考えてしてきた抗がん剤治療などが本当に「患者さんにとって」最善だったのかを考えなおします。これまでも、そういったクリニックに流れていく患者さんを診てきていますが、私を含めて主治医との関係性がこじれていることがあります。
まずは「患者さんは納得して一緒に治療をしてくれていたのか?どこかの説明などでエビデンスやガイドラインを盾にして頭ごなしになっていなかったか?」と自問自答します。
教科書的な「患者さんになぜそう思ったのかを聞く。」はその次だと思います。

②患者さんにとっては、がん治療=抗がん剤や小さくするための治療であって、がん治療に緩和ケアが含まれるという意識は医療者と非医療者での隔たりがまだまだ大きいです。自費診療のクリニックで治療を受けたいと言ってくれた患者さんには私の考えを話しますが、それでもというのであれば、止めることはしません。何か私が協力できることがあればしますし、もしどこか別の医療機関にかかることが希望であれば、、、と言って、対応してくれそうな医療機関を紹介してそこの先生と連絡を取り合ってみます。

自費診療のエビデンスがなく高額なところに行って、患者さん・家族が満足するのであればそれも一つの答えと思います。搾取している側のクリニックは許せませんが。

エビデンスがない中で闘病して、治療が生きる目標になっている患者さんもいることを私たちが受け入れないといけない時もあると考えています。

2022.02.13 | がん治療Q&A

子宮体癌の新治療

2021年12月24日に子宮体癌に対してキートルーダとレンビマ併用療法が二次治療として承認されました。

子宮体癌はカルボプラチン+パクリタキセル(TC療法)、ドキソルビシン+シスプラチン(AP)療法で初期治療が行われます。

今後はカルボプラチンやシスプラチンを使用後に進行してしまった症例に対するキートルーダ+レンビマが使えるようになりました。

NEJMに承認にいたった試験が掲載されていたので見ていきます。

子宮体癌の827例を対象として1:1の割付試験になっております。
キイトルーダ+レンビマ群 vs 従来の治療群
免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待されるdMMRの患者さんは130人おりますがこれも1:1で割付されています。

pMMR(ミスマッチ修復欠損のない)でも青い線がキイトルーダ+レンビマのように従来の治療よりも良い成績が出ています。

全体でも同様にキイトルーダ+レンビマが勝っています。10%くらいの症例では長期にわたって再発を認めていません。(免疫チェックポイント阻害薬使用時のLong tailと思われます)

生存率もこのようにキイトルーダ+レンビマが効いています。

非常に効果が高い治療であることが分かる一方で副作用も気になります。私も以前に違う癌種の患者さんに臨床試験でキイトルーダ+レンビマを使用したことがありますが、副作用が大変で患者さんも私たちもマネージメントに苦慮した記憶があります。

高血圧、甲状腺機能低下症が50%以上で見られています。Grade3以上の副作用も従来治療よりも16%ほど多く出ています。既存治療では多い、白血球減少症が少ない代わりにその他の副作用が出ます。特にレンビマは倦怠感なども強く出るため投与量などの検討が必要な薬剤です。

広島県だと婦人科で治療されることが多いと思いますが、内科医との密な連携が必要な治療になっていきます。

最近は婦人科癌の新規治療の承認がいくつかあり嬉しいことです。4月からはHPVワクチンも公費で承認されて、キャッチアップも広がります。1人でも多くの患者さんが良い治療を受けられるように、また防げるようになってきています。当院ではがん治療はできませんが、副作用サポートやフォローアップ、HPVワクチン接種はできますのでご相談ください。

2022.02.07 | がん治療Q&A

日本のがん治療に足りないもの

11月3日のLancet Oncologyに高齢がん患者さんの治療に関して興味深い論文を見つけました。今回は長くなりますが、読んでいただけると幸いです。

70歳以上のがん患者さんを治療するときには、高齢者機能評価のサマリーを提供してもらうことにより抗がん剤の毒性が減り、患者の自己意思決定能力も上昇し、転倒も減らしたという内容でした。

日本では、患者さんも「困った時には主治医に相談したい!」と思っている方が多いと思います。これまでかかりつけ医だった診療所などの先生も、がんの副作用は主治医に聞いてください(あなたも主治医なんですけど!)となるケースが多いです。しかしながら、総合病院の先生の外来日は決まっており、電話でもなかなか相談できない、来週の外来日の予約とっておきますね。と言われてそれまで耐える、耐えられなかったら救急車を呼んでしまう。。。こんなことが起きているのが現実です。

この論文内で知ったのですが、アメリカにはCommunity Oncology Practiceという言葉があるようです。地域にいる腫瘍医や看護師のことを指し、治療もすれば、時には他の病院で治療をしている患者のフォローアップなども行い、プライマリケア医としての役割も果たすとあります。

https://coaadvocacy.org/what-is-community-oncology/

日本では臓器別のがん治療が発達しているため、かかりつけになれるがん治療医は稀です。がん治療は大きな総合病院でやるべきという考えが、医師・患者双方にあります。私が広めていきたい地域の総合腫瘍医はがん治療、副作用マネージメントを総合病院の医師と連携してもできるし、自分でも実施できる、そしてフォローアップ、緩和ケアまでとがん患者の一生、Cance Journeyに寄り添える総合診療医の育成です。日本のプライマリケア医、診療所の医師は予防、緩和ケアには強いけど治療中のフォローに関して体系的に学ぶプログラムがありません。 高血圧、糖尿病と同じ慢性疾患で誰しもが罹患する可能性がある疾患なのに、診断・治療・緩和が分断されすぎているために、主治医から抗がん剤治療はこれ以上ないと言われたときに見捨てられた感が強くなると考えています。がん治療中にももっと関わってくれるプライマリケア医を育てて、全国に増やさないといけません!

この論文なのですが、特に何をしていたかというと、
①IADLを評価 手段的日常生活動作:電話や買い物、洗濯などの評価
②Short Physical Performance Batteryの評価:バランスや歩行の評価
③Geriatric Depression Scaleの評価:うつ状態や精神状態の安定性を評価
④治療中の注意事項

上記をCommunity Oncologistに渡していたようです。そんなに難しいことではなく、医師でなくても評価はできるものです。

青いのがサマリーをもらった群、ねずみ色はサマリーをもらわない群です。Grade3-5という生活に支障が出る副作用が明らかに青い方で少なくなっています。
投与量は患者からの申し出などのShared Decision Makingが連携群のほうが多く、投与量は減ったようです。その結果、副作用も少なくなっています。
投与量が減っていたにも関わらず、寿命は変わりませんでした。

この論文の結論としては高齢者のがん治療をするときには評価シートを用いることを標準治療に組み込むべきだとなっています。

日本の現状では、総合病院の臓器別がん治療医がここまでフォローするのは無理です。忙しい外来・病棟・書類仕事の中でそこまでするのは難しく、これを行えるのは診療所やクリニックのかかりつけ医だと考えます。開業医が暇と言っているわけではなく、患者さんと対等に話ができ、どのような地域で生活していて、誰と一緒に暮らしていて、何が趣味なのかなど患者背景を知っておくことでこの評価シートが最大限生かされると考えられます。
そして、患者さんの思いや副作用、抗がん剤治療の提案などをがん治療医に提案して一緒に治療をしていく。こういった体制が取れるようになると高齢化社会を迎えた日本のがん治療がより良い方向に行くのではないかと思います。治療ができないと言われてどこに行ったらいいか分からない、、、などといったがん難民を減らす一助にもなると考えています。

まとまりのない文章になってしまいましたが、日本のがん治療に欠けている物をこの論文から考えることができたので掲載させてもらいました。

2021.12.16 | がん治療Q&A

投与時間で効果が変わる抗がん剤

最初に思ったのは、よくこんなの思いついて調べたな。。。でした。

免疫応答にはサーカディアンリズムが関係していることが研究で分かってきており、免疫チェックポイント阻害薬も投与時間によって、反応性が変わってくるのではないか?という仮説に対する調査だったようです。もともと、ワクチンも午前中に接種した方が抗体産生の反応が強いという報告があったようです。

8年間もかけて、悪性黒色腫の患者さんの治療効果、投与時間などを調べています。

その結果、午前と午後の早い時間帯に免疫チェックポイント阻害薬を投与された患者さんのほうが全生存期間が長かったことがわかりました。特に16時30分以降に20%以上の免疫チェックポイント阻害薬を投与された患者さんでは全死因死亡リスクが31%も高かったとのことでした。

免疫チェックポイント阻害薬を含め抗がん剤は午前中にして、殺細胞薬や分子標的薬を午後にもってくるような流れになっていくのでしょうか???

こういった研究論文って面白いですよね。とても大事なことだと思います。

2021.12.12 | がん治療Q&A

がん治療の食事

ホームページのアクセス履歴を見ていくと、一番人気がある投稿ががん治療中の食事に関するものでした。

治療も大事ですが、意外とある程度しっかりした病院でないと食事指導などの支持療法は受けられない現実もあるからでしょうか・・・

ファイザーのホームページにがん患者さんたちの食事レシピ集があったのでリンクをはっておきます。ご参照ください。

診療所内で料理教室とか開けるようにしたいな~

がん患者さんのための食事・レシピ集|がんを学ぶ ファイザー (ganclass.jp)

2021.12.04 | がん治療Q&A