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がんと遺伝

遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)

乳がんや卵巣がんを調べたことがある人であればBRCA遺伝子、HBOCという言葉を聞いたことがあると思います。

BRCA遺伝子は遺伝子が傷ついた時に修復する役割を担っています。

この遺伝子に異常があると遺伝子修復ができなくなり、傷ついた遺伝子が増幅していきます。結果として癌になりやすくなるということです。

特に乳癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌に特に関係があることが分かっています。

BRCA遺伝子はBRCA1、BRCA2の2種類が知られています。

乳癌

BRCA遺伝子異常があると70歳までに50%、約半数の人が乳癌を発症するリスクがあると言われています。特徴としては①発症年齢が若い②両側乳癌③家族歴があるなどが挙げられます。BRCA2は男性乳癌に多いとされて、14%程度の人に見られる。

卵巣癌

BRCA遺伝子異常があると70歳までにBRCA1で40%、BRCA2で18%が卵巣癌になると言われています。634人の卵巣癌患者を対象としてBRCAを調べたCHARLOTTE試験では14.7%と出ました。ステージ3・4の進行卵巣癌に関しては24.1%と高かったことが分かりました。乳癌に関しては約10%程度の人が遺伝子異常を持っていると言われています。

膵臓癌、前立腺癌

BRCA2を持っているケースが多いです。

BRCA遺伝子検査は生殖細胞遺伝子変異も確認するため遺伝カウンセリングが必須になります。保険適応でBRCA遺伝子検査はできます。検査自体の費用は約6万円です。それにカウンセリング費用が加わります。

現在の日本ではオラパリブ(リムパーザ)が生殖細胞列のBRCA遺伝子変異が陽性であれば使用できます。卵巣癌、乳癌に関して保険適応が通っています。2019年のアメリカ臨床腫瘍学会で転移・再発膵臓癌に対する維持療法で無増悪生存期間中央値が延長(3.8か月 vs s7.4か月)されたPOLO試験の発表もありました。

2020.02.27 | がんと遺伝

遺伝子検査

 令和元年にNCCオンコパネル、Foundation Oneを用いたがんゲノム検査が保険適応となりました。これまでのがん治療がどう変わるのか?NCCオンコパネルとFoundation Oneの違いなどを書いてみようと思います。

 

DNAのイラスト

 遺伝というと親から引き継いだもので子供たちにも影響するものだと思っていませんか?必ずしもそうではありませんがん細胞自体の遺伝子変異(Somatic mutation)と胚細胞由来の遺伝子変異(Germ line mutation)と2種類あることを知っておいてください。

Kintalk UCSFより改編 https://kintalk.org/genetics-101/

 上の図のようなパターンがあります。生殖細胞(精子、卵子)遺伝子変異があれば子供たちに遺伝していく可能性があり、体細胞変異(がん細胞だけの変異)であれば遺伝はしないことが分かると思います。                 この遺伝子変異を見つけるのがNCCオンコパネル、Foundation Oneになります。増えているがん細胞にしかない遺伝子異常が見つかって、その遺伝子に異常に対する薬ができればがん細胞がなくなるんじゃないか?というのが遺伝子治療の概要です。

①生殖細胞遺伝子変異も分かるNCCオンコパネル              NCCオンコパネルの名前の由来は National Cancer Center 築地にある国立がん研究センターで作成されたからです。検査の特徴としては血液中の遺伝子とがん細胞を比較することにあります。

間違い探しみたいな感覚ですね。正常細胞とがん細胞を比較してより正確に遺伝子変異を見つけようとします。ただし、正常な細胞に遺伝子異常が見つかると生殖細胞遺伝子変異の可能性が出てきます。NCCオンコパネルで分かる生殖細胞遺伝子変異には以下のようなものがあります。

遺伝子
BRCA1, BRCA2Hereditary Breast and Ovarian Cancer
TP53Li-Fraumeni Syndrome
STK11/LKB1Peutz-Jeghers Syndrome
MLH1, MSH2Lynch Syndrome
APCFamilial Adenomatous Polyposis
VHLVon Hippeel Linday Syndrome
RETMultiple Endocrine Neoplasia Type 2
Familial Medullary Thyroid Cancer
RB1Retinoblastoma
PTENPTEN Hamartoma Tumor Syndrome
TSC1Tuberous Sclerosis Complex
SMAD4Juvenile Polyposis

②Foundation One    腫瘍細胞のみを使用して324個の遺伝子変異を調べます。こちらの検査の大きな特徴は肺がん、悪性黒色腫、乳がん、大腸がんへの保険適応されている分子標的薬が使用可能です。

どちらの検査も生涯で1回しかできません。どのタイミングで行うかどうかは担当医との相談が必要です。

誤解されることがあるのですが、遺伝子変異が見つかれば治療薬が使用できる・効果があると思っている医療者も少なくありません。しかしながら、調べる遺伝子異常のすべてに薬があるわけでもなく、運よく(10%程度)見つかったとしても保険では使用することができず、患者申し出療養費か自費で治療を受けないといけません。また必ず効果があるわけではないので慎重な判断が必要となります。治験などの参考にはなるかもしれません。

次回はBRCA遺伝子に関して書きたいと思います。

2020.02.06 | がんと遺伝

ブログのきっかけ

がん治療などのコーナーを担当している瀬尾卓司と申します。

私は愛知医科大学を卒業後に沖縄、千葉、広島、東京の病院や診療所で働いてきました。突然ですが、私がなぜこのようながん患者さんの診療を診療所で行っていきたいかという理由などを書かせてもらいたいと思います。様々な意見があるかもしれませんが、興味のある方は一読していただけると嬉しいです。

学生時代に友人が、がんを患ったことがきっかけで腫瘍内科医を志すようになりました。

その時の体験などから地方にこそ、がん診療ができる総合診療医が求められているのであにかと考えるようになりました。愛知医科大学卒業後に沖縄、千葉、広島、東京と総合病院やがん専門病院を中心に働いてきました。総合病院がたくさんあり、交通も便利な都市であれば以下のようなことは問題ないことが多いですが、世羅や尾三地区に住んでいると以下のようなことが問題になってきます。

 がん患者さんは高血圧や糖尿病など多くの合併症を抱えていることがあります。がん治療専門医だと、がん治療はするけど他の病気は循環器内科や糖尿病科に受診を促すことになります。複数科を受診することは大変なことです。特に地方や田舎から治療に行っていると、受診日が合わなかったら連日受診が必要になり、、、と負担はより大きくなります。  かかりつけの先生に相談するが、抗がん剤を使用していると診療できないから総合病院で相談して下さい。と言われることもあります。非常につらい思いをしながらがん治療を継続している患者さんもいると思います。”がん患者さんを診療できるかかりつけ医”が今後は求められてきます。

 がん専門病院で働いていた時には遠方から何か治療はないか。治験に参加したい。とぎりぎりの体力を使って受診される患者さんも見てきました。しかし専門病院で治療を受けることができる患者さんはほんの一握りでした。その理由には様々なことがあります。①臨床試験や治験には除外基準があり引っかかる。②合併症が多く、がん専門病院だけでは治療ができない。③そもそも臨床試験・治験がない。などがあります。これらは主治医が情報を入手して、がん専門病院と予め連携を取っていると患者さんに受診するという負担をかけなくても解決できます。

瀬尾医院だと抗がん剤治療は難しいですが、副作用を含めた合併症の管理を一緒に行い地方のがん患者さんの負担をできうる限り少なくしたいというが目標です。まだまだ勉強中の身でもありますし、すべての問題や副作用を解決できるわけではありませんが、少しでもがん患者さんに寄り添える医療をしたいと思っています。

都市に出なくても安心して最善の治療を受けることができる環境作りを世羅郡から発信したいと思っています。がん関連のことであればどんなことでも構いません。相談したいことがあればご相談ください。

2019.12.03 | がんと遺伝,がん治療Q&A,医療費の軽減制度,希少がんについて