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がんと遺伝

Foundation One Liquid

これまではがん組織がないと検査ができなかった遺伝子検査ですが、今年の夏からいよいよ血液検査でもがん組織の遺伝子検査が行えるようになります。

Foundation One Liquid(ファンデーションワンリキッド)と呼ばれるもので、血液中のがん細胞のDNAを拾って遺伝子検査を行います。

がんの組織検体が少なくて、検査に出せなかった。がん組織が体の深くにあり取ってくることができなかった。手術した検体が古くて検査ができなかった。というような患者さんたちにとって有益な検査になる可能性があります。

広島県では決まった施設でしかできないですが、主治医の先生方に是非たずねてみてください。

2021.07.19 | がんと遺伝,がん治療Q&A

すい臓がんに対するルカパリブ

すい臓がんは未だに早期発見が難しく、予後が非常に悪いがんの1つです。mFOLFILINOX療法奏功例に対してBRCA陽性であればオラパリブという薬が適応になっています。BRCA遺伝子陽性患者においては無病増悪期間を延長する新しい治療選択となっています。

Journal of Clinical Oncologyという雑誌にルカパリブというPARP阻害薬のすい臓がんに対する効果が出ていました。いわゆる第1/2相試験で承認されるにはまだまだ時間がかかりそうですが、いい結果が出ているので共有します。

白金製剤~プラチンという薬で腫瘍の縮小が得られた患者でなおかつBRCA1, 2 , PALB2の遺伝子変異がみられた42人を対象としています。16週間のプラチナ製剤を含む治療後にルカパリブ投与を行っています。

結果ですが、生存期間中央値が23.5カ月、無病増悪期間中央値が13.1カ月とこれまでのすい臓がんの治療よりも非常に良い成績が得られています。もちろん、第2相試験のため、今後行われるであろう第3祖試験では違った結果が出る可能性もあります。ですが、非常に有用かもしれない新しい治療選択がすい臓がんに導入されるかもしれないという期待を持たせてくれる臨床試験だと思います。

2021.05.12 | がんと遺伝,がん治療Q&A

遺伝検査の現状

医学生や医師向けに医学界新聞というのが無料で配布されています。

今月の医学界新聞に”がんゲノム医療の明日を考える”というタイトルで掲載がありました。

http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03377_01

司会の小山隆文先生は私が亀田総合病院の腫瘍内科時代の上司であり、亀田総合病院を離れた後にも指導していただき、国立がん研究センター中央病院へ誘ってくれた恩師です。

一時期にメディアでも遺伝子検査、個別医療という言葉が躍り話題になりました。最近はコロナの話題などもありメディアではあまり見かけていませんが、着実に検査数は増えているのが分かります。

保険収載から1年たちますが、治験に結び付いた数は非常に少ないのが分かります。また、検査結果の解釈は非常に専門性が高いため人材育成や確保が課題のようです。

広島では広島大学病院を中心としてやっと遺伝カウンセリングの体制が整ったりしてきているのが現状です。今後、広島県でのデータ蓄積がされ1人でも多くの患者さんに恩恵があると良いと思います。

2020.07.03 | がんと遺伝

遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)

乳がんや卵巣がんを調べたことがある人であればBRCA遺伝子、HBOCという言葉を聞いたことがあると思います。

BRCA遺伝子は遺伝子が傷ついた時に修復する役割を担っています。

この遺伝子に異常があると遺伝子修復ができなくなり、傷ついた遺伝子が増幅していきます。結果として癌になりやすくなるということです。

特に乳癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌に特に関係があることが分かっています。

BRCA遺伝子はBRCA1、BRCA2の2種類が知られています。

乳癌

BRCA遺伝子異常があると70歳までに50%、約半数の人が乳癌を発症するリスクがあると言われています。特徴としては①発症年齢が若い②両側乳癌③家族歴があるなどが挙げられます。BRCA2は男性乳癌に多いとされて、14%程度の人に見られる。

卵巣癌

BRCA遺伝子異常があると70歳までにBRCA1で40%、BRCA2で18%が卵巣癌になると言われています。634人の卵巣癌患者を対象としてBRCAを調べたCHARLOTTE試験では14.7%と出ました。ステージ3・4の進行卵巣癌に関しては24.1%と高かったことが分かりました。乳癌に関しては約10%程度の人が遺伝子異常を持っていると言われています。

膵臓癌、前立腺癌

BRCA2を持っているケースが多いです。

BRCA遺伝子検査は生殖細胞遺伝子変異も確認するため遺伝カウンセリングが必須になります。保険適応でBRCA遺伝子検査はできます。検査自体の費用は約6万円です。それにカウンセリング費用が加わります。

現在の日本ではオラパリブ(リムパーザ)が生殖細胞列のBRCA遺伝子変異が陽性であれば使用できます。卵巣癌、乳癌に関して保険適応が通っています。2019年のアメリカ臨床腫瘍学会で転移・再発膵臓癌に対する維持療法で無増悪生存期間中央値が延長(3.8か月 vs s7.4か月)されたPOLO試験の発表もありました。

2020.02.27 | がんと遺伝

遺伝子検査

 令和元年にNCCオンコパネル、Foundation Oneを用いたがんゲノム検査が保険適応となりました。これまでのがん治療がどう変わるのか?NCCオンコパネルとFoundation Oneの違いなどを書いてみようと思います。

 

DNAのイラスト

 遺伝というと親から引き継いだもので子供たちにも影響するものだと思っていませんか?必ずしもそうではありませんがん細胞自体の遺伝子変異(Somatic mutation)と胚細胞由来の遺伝子変異(Germ line mutation)と2種類あることを知っておいてください。

Kintalk UCSFより改編 https://kintalk.org/genetics-101/

 上の図のようなパターンがあります。生殖細胞(精子、卵子)遺伝子変異があれば子供たちに遺伝していく可能性があり、体細胞変異(がん細胞だけの変異)であれば遺伝はしないことが分かると思います。                 この遺伝子変異を見つけるのがNCCオンコパネル、Foundation Oneになります。増えているがん細胞にしかない遺伝子異常が見つかって、その遺伝子に異常に対する薬ができればがん細胞がなくなるんじゃないか?というのが遺伝子治療の概要です。

①生殖細胞遺伝子変異も分かるNCCオンコパネル              NCCオンコパネルの名前の由来は National Cancer Center 築地にある国立がん研究センターで作成されたからです。検査の特徴としては血液中の遺伝子とがん細胞を比較することにあります。

間違い探しみたいな感覚ですね。正常細胞とがん細胞を比較してより正確に遺伝子変異を見つけようとします。ただし、正常な細胞に遺伝子異常が見つかると生殖細胞遺伝子変異の可能性が出てきます。NCCオンコパネルで分かる生殖細胞遺伝子変異には以下のようなものがあります。

遺伝子
BRCA1, BRCA2Hereditary Breast and Ovarian Cancer
TP53Li-Fraumeni Syndrome
STK11/LKB1Peutz-Jeghers Syndrome
MLH1, MSH2Lynch Syndrome
APCFamilial Adenomatous Polyposis
VHLVon Hippeel Linday Syndrome
RETMultiple Endocrine Neoplasia Type 2
Familial Medullary Thyroid Cancer
RB1Retinoblastoma
PTENPTEN Hamartoma Tumor Syndrome
TSC1Tuberous Sclerosis Complex
SMAD4Juvenile Polyposis

②Foundation One    腫瘍細胞のみを使用して324個の遺伝子変異を調べます。こちらの検査の大きな特徴は肺がん、悪性黒色腫、乳がん、大腸がんへの保険適応されている分子標的薬が使用可能です。

どちらの検査も生涯で1回しかできません。どのタイミングで行うかどうかは担当医との相談が必要です。

誤解されることがあるのですが、遺伝子変異が見つかれば治療薬が使用できる・効果があると思っている医療者も少なくありません。しかしながら、調べる遺伝子異常のすべてに薬があるわけでもなく、運よく(10%程度)見つかったとしても保険では使用することができず、患者申し出療養費か自費で治療を受けないといけません。また必ず効果があるわけではないので慎重な判断が必要となります。治験などの参考にはなるかもしれません。

次回はBRCA遺伝子に関して書きたいと思います。

2020.02.06 | がんと遺伝