がん知識の森

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がん治療Q&A

抗がん剤中の食事

「食事はいつも通りでいいですか?」

抗がん剤を受けている方、抗がん剤を受けている家族がいる方から良く受ける質問の1つです。

主治医やインターネットから

「抗がん剤治療中は感染症にかかりやすいから、野菜は火を通して、お寿司は避けてください。」と言われて食事が味気ないものになっていませんか?

私は、                                 「好きなものを食べて、少しずつでも必ず口にするようにしてください。」  と伝えています。

実は、昔から生はダメと言われていますが、しっかりとしたデータはありません。1900年代と現代では食品の物流方法や管理方法が大きく変わっています。 実際に私の患者さんは抗がん剤治療中でもサラダやお寿司を食べていますが、問題になったことはありません。食事は抗がん剤治療中で多くのことを制限されている患者さんにとっては重要ですよね。

少し古い文献ですが、2011年に ”The Benefit of the Neutropenic Diet : Factor or Fiction? (免疫が低下しているときのご飯 : 事実なのかフィクションなのか?)” から引用してみます。

抗がん剤投与を受けると薬剤や個人差によりばらつきがありますが、7日目くらいから白血球数が減少してきて、1週間~10日間くらいかけて正常値に戻ります。この期間は免疫力が低下しており、発熱や感染症に気を付けなければいけません。 すべてに火が通った食事と制限をかけない食事のどちらがいいかという研究者1960年代から行われていますが、実ははっきりとした違いが出ていません。

そのため、各ガイドラインにも「はっきりとしたデータがあるわけではないが」と前置きされたうえで、生肉、生魚、生卵、洗っていない野菜やフルーツは避けたほうがよいかもしれません(Oncology Nursing Society Cancer Chemotherapy Guidelines and Recommendation s for Practice)。と書かれています。The United States Department of Agricultureからは、①低温殺菌されていないジュースやチーズなどは避ける②食事前には手を洗う③期限切れの商品は食べない④保存してある生肉、生魚、生鶏肉は気を付けましょう。と書かれているだけです。

知らない人は驚くかもしれませんが、抗がん剤治療中は野菜にはすべて火を通して、生魚はダメ!というのは何の根拠もないのです。

個人のリスクにもよりますが、好きな食事をおいしく食べることは抗がん剤治療にとってもプラスに働きます。新鮮な野菜をしっかりと流水ですすいでサラダを作る、免疫力の低下のない時期などにお寿司を食べに行くなど、食事を楽しみましょう。

2020.02.27 | がん治療Q&A

ピロリ菌と胃癌

 皆さんはピロリ菌という細菌を聞いたことがあるでしょうか?胃癌や胃潰瘍などの原因となる細菌のことです。  

 オーストラリアのマーシャル博士が自分で細菌を飲み込んで胃潰瘍になったことで発見され、ノーベル賞を取っています。今回はピロリ菌にまつわる話をしてみたいと思います。

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ABC検診                               

健康診断でABC検診というのを行ったことがある人もいるかもしれません。  ピロリ菌抗体検査とペプシノーゲン法(萎縮性胃炎:ピロリ感染している胃粘膜)を採血で調べます。胃癌のリスクを評価する血液検査です。

ピロリ菌を検査するその他の方法

  • 内視鏡検査で一部を取ってきて培養検査
  • 内視鏡検査で一部を取ってきて迅速検査
  • 尿素呼気試験
  • 便中抗原検査

があります。状況などによってどの検査が適切かはご相談ください。

ピロリ菌に感染しているとどれくらい胃癌になりやすいのか?

2020.02.06 | がん治療Q&A

がん性疼痛と鍼灸

癌性疼痛に対する鍼灸治療

癌性疼痛は痛み止めや麻薬を使用しても完全に克服することがむずかしいのが現状です。

今回は鎮痛剤や医療用麻薬で痛みが取れず悩んでいる患者さんに対して情報提供を行います。2019年12月の論文にがん性疼痛に鍼灸療法の有効性が示された論文が出てました。

今回が初めてというわけではなく、以前から鍼灸療法ががん性疼痛に有効性があることは言われていました。国立がん研究センター中央病院にも数は少ないですが鍼灸外来がありました。今回発表されたものは1607件の鍼灸とがん性疼痛に関わる論文から17件を抽出して検証しています。通常の鎮痛薬に鍼灸療法を追加することにより、術後疼痛から終末期のがん性疼痛まで比較的良好な結果が出ています。

 アメリカのMD Anderson Cancer CenterやMayo Clinicにもがん性疼痛に対する鍼灸療法のホームページがあります。その中からMayo Clinicホームページの10個の代替療法に関して記載します。

不安 瞑想、マッサージ、リラクゼーション
倦怠感 運動、マッサージ、リラクゼーション、ヨガ
吐き気・嘔吐 鍼灸、アロマセラピー、瞑想、音楽療法
痛み 鍼灸、アロマセラピー、瞑想、マッサージ、音楽療法
睡眠障害 運動、リラクゼーション、ヨガ
ストレス アロマセラピー、運動、瞑想、マッサージ、ヨガ、太極拳

鍼灸:鍼灸療法が様々な効果があることは分かっているが、貧血や白血球数が少ないときには主治医に施行して良いか確認しましょう。

アロマセラピー:マッサージやリラックス中にアロマを炊くのもいいし、バスオイルを使用するのも良いです。特に吐き気、痛み、ストレスをとるのに有効です。

運動:適度な運動が倦怠感やストレスを和らげます。予後を延長、生活の質(QOL)の向上につながると言われています。

Hypnosis(催眠):深く集中した状態で暗示をかけることにより不安や痛みを軽くする効果があると言われます。あまり馴染みのないことなので変な感じがしますね。

マッサージ:血球が少ない時にはマッサージは避ける。放射線症を行った場所、腫瘍がある部位のマッサージは避けてもらうようにマッサージ師に伝えてください。強めではなく、皮膚や筋肉をほぐすようなマッサージをしてもうらようにしましょう。

瞑想:ポジティブシンキングを迷走状態で行うことによってがんの不安やストレスを軽減します。催眠効果と似たような状況かもしれませんね。

音楽療法:音楽療法士という専門家がいます。日本ではなじみがまだまだありませんが、吐き気・嘔吐に効果があると言われています。

リラクゼーション:精神を落ち着かせ、脱力することで緊張状態からリラックスした状態にもっていきます。

太極拳:とてもゆっくりと深呼吸をしながら体を動かします。負担も少なく推奨できる運動の一つです。動きで痛みが出るときには辞めておきましょう。

ヨガ:ストレッチと深呼吸を組み合わせており、有効な運動の一つです。

以上が10個の代替療法です。

いずれの治療も単独ではなくあくまで鎮痛剤や医療麻薬に追加で行うことが重要です。

主治医とも相談して行いましょう。

He Y, Guo X, May BH, Zhang AL, Liu Y, Lu C, et al. Clinical Evidence for Association of Acupuncture and Acupressure With Improved Cancer Pain: A Systematic Review and Meta-Analysis. JAMA Oncology. 2019.

https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/cancer/in-depth/cancer-treatment/art-20047246

2020.01.23 | がん治療Q&A

ブログのきっかけ

がん治療などのコーナーを担当している瀬尾卓司と申します。

私は愛知医科大学を卒業後に沖縄、千葉、広島、東京の病院や診療所で働いてきました。突然ですが、私がなぜこのようながん患者さんの診療を診療所で行っていきたいかという理由などを書かせてもらいたいと思います。様々な意見があるかもしれませんが、興味のある方は一読していただけると嬉しいです。

学生時代に友人が、がんを患ったことがきっかけで腫瘍内科医を志すようになりました。

その時の体験などから地方にこそ、がん診療ができる総合診療医が求められているのであにかと考えるようになりました。愛知医科大学卒業後に沖縄、千葉、広島、東京と総合病院やがん専門病院を中心に働いてきました。総合病院がたくさんあり、交通も便利な都市であれば以下のようなことは問題ないことが多いですが、世羅や尾三地区に住んでいると以下のようなことが問題になってきます。

 がん患者さんは高血圧や糖尿病など多くの合併症を抱えていることがあります。がん治療専門医だと、がん治療はするけど他の病気は循環器内科や糖尿病科に受診を促すことになります。複数科を受診することは大変なことです。特に地方や田舎から治療に行っていると、受診日が合わなかったら連日受診が必要になり、、、と負担はより大きくなります。  かかりつけの先生に相談するが、抗がん剤を使用していると診療できないから総合病院で相談して下さい。と言われることもあります。非常につらい思いをしながらがん治療を継続している患者さんもいると思います。”がん患者さんを診療できるかかりつけ医”が今後は求められてきます。

 がん専門病院で働いていた時には遠方から何か治療はないか。治験に参加したい。とぎりぎりの体力を使って受診される患者さんも見てきました。しかし専門病院で治療を受けることができる患者さんはほんの一握りでした。その理由には様々なことがあります。①臨床試験や治験には除外基準があり引っかかる。②合併症が多く、がん専門病院だけでは治療ができない。③そもそも臨床試験・治験がない。などがあります。これらは主治医が情報を入手して、がん専門病院と予め連携を取っていると患者さんに受診するという負担をかけなくても解決できます。

瀬尾医院だと抗がん剤治療は難しいですが、副作用を含めた合併症の管理を一緒に行い地方のがん患者さんの負担をできうる限り少なくしたいというが目標です。まだまだ勉強中の身でもありますし、すべての問題や副作用を解決できるわけではありませんが、少しでもがん患者さんに寄り添える医療をしたいと思っています。

都市に出なくても安心して最善の治療を受けることができる環境作りを世羅郡から発信したいと思っています。がん関連のことであればどんなことでも構いません。相談したいことがあればご相談ください。

2019.12.03 | がんと遺伝,がん治療Q&A,医療費の軽減制度,希少がんについて

インフルエンザワクチンについて

インフルエンザの季節が本格的に到来しました。がん患者さんから良く受ける質問に「インフルエンザワクチンを打っていいですか?」があります。

26463人のがん患者さんを対象としたインフルエンザワクチンの効果を見た臨床試験があります。この中には抗がん剤治療を受けている患者さんも23%含まれています。4インフルエンザワクチンを打つことが有効かどうかを調べています。

インフルエンザ流行期間の間に4320人の患者さんがインフルエンザ陽性となりました。11783人がワクチンを受けていました。ワクチンを打っていない人と比較すると、インフルエンザにかかる割合、入院率などすべてが下がりました。特に固形癌の患者さんでは効果が高く、抗がん剤治療中かどうかは関係がありませんでした。

がん患者さんは治療中の有無にかかわらずインフルエンザワクチンを打ちましょう。

手洗いなど予防なども行いましょう。

Journal of Clinical Oncology 37, no. 30 (October 20, 2019) 2795-2804.

2019.12.02 | がん治療Q&A