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コロナの後遺症

ここ数日でコロナウイルス感染後の後遺症がやばいとメディアが放送しているのが目につきました。医学雑誌(JAMA)に掲載された論文が根拠になっているようです。一緒に読んでみましょう。

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2768351?guestAccessKey=d1667efd-96a5-4e29-96a6-040ef09c54ef&utm_source=silverchair&utm_medium=email&utm_campaign=article_alert-jama&utm_term=mostread&utm_content=olf-widget_07102020

7月9日にイタリアから発表されたようです。143人のコロナウイルスで入院した患者さんを対象にアンケートをとっています。結果は以下のようになっています。国立国際医療研究センター病院の忽那先生が和訳の表を作成してくださっていたので引用させてもらいます。

患者さんの87.4%が退院後にも何らかの症状を訴えていることが分かりました。55%の半数以上の方は3つ以上の症状があるようです。これだけ聞くと、なんて恐ろしい病気なんだと思いますよね。

次に患者さんの特徴を見ていきましょう。

Demographic and Clinical Characteristics of the Study Sample (N = 143)

年齢の中央値が56.5歳、最も多い合併症が高血圧で35%、心不全やCOPDといった合併症がある人も4.9%、9.1%います。肺炎を起こしていた患者さんが72.7%、酸素投与を受けていたのが53.8%、人工呼吸器が4.9%です。急性期の症状が出てから約60.3日後にアンケートを回答した人が多いようです。生活の質(QOL)が悪くなったという人が44.1%います。

87.4%の人が退院後も症状があると言っていますが、生活の質が低下したと答えているのは44.1%と約半数にとどまっています。

この結果を解釈するのに注意点がいくつかあります。

①入院患者さんが対象となっている=比較的重症患者さんが多い

②1施設のみの集計

③コロナウイルス以外の肺炎などでも治癒後の症状が残ることはある

④コロナウイルスにかかる前から倦怠感や息切れがあったかは聞かれていない=心不全やCOPDがある人はコロナウイルスにかかる前から何らかの症状があってもおかしくないですよね。

⑤アンケートなので、聞かれたら何となくそうかもしれない、、、と答えてしまうバイアスが出てくる。

以上のような注意点があるため、このデータから後遺症が8割以上の人に残りますよ!とはなりません。

ただ、感染後にも苦しんでいる人がいるのは事実なので感染しないように手洗い、マスク、感染者がいそうな密になる場所には出向かないというのが大切なことに変わりはありません。

2020.07.14 |

患者数が増えてるのは検査が増えてるせい?

東京での感染者数が200人を超え、それに呼応するかのように地方の感染者数も増えてきています。広島でも7月13日に3人の陽性者数が発表されました。

小池都知事や政府発表では感染者数が増えているのは積極的に検査をおこなっているからであり、4月とは状況が違うと言っています。本当にそうでしょうか?

検査を行えば陽性者数が増えるのは当たり前のように聞こえますが、そうではありません。ニューヨークってどうなった?で紹介させていただいたデータでは検査数は右肩上がりでしたが、感染者数は減ってきていました。さらに国立国際医療研究センター病院の発表では新宿区のPCRスポット陽性率が40%を超える日もあるとのことです。

関東では市中感染がどんどん広がっていると考えられます。検査数が増えているから陽性者が増えるのは当たり前、安心していいというのは違います。

若い人が感染者が増えていますが、若いと大丈夫というわけではありません。一定数で重症者は出ます。感染者の大部分は20代~30代と言われますが、感染者数自体が増えていっているので若年者以外の陽性者数も確実に増えています。

入院患者数も徐々に増えてきているのが見てわかります。コロナウイルス陽性患者を入院で診る病院の負担はかなりのもので、病床の変更や重症者が出たときの準備、予定手術をどうするのかなど神経をすり減らします。

広島の検査体制が拡充されているかは不透明です。東京への出張なども増えているようですし、市中感染は広がっている可能性があります。東京からの流入を止めればよいという問題ではなく、重症化しやすい高齢者や病院での院内感染を防ぐための対応を検討していかなければいけないと思います。

東京で起きている感染者増は決して対岸の火事ではありません。

一般市民の方々は手洗い、マスク着用、風邪症状がある時などには仕事を休むなどの感染対策を今一度徹底しましょう。

2020.07.13 |

ニューヨークってどうなった?

一時期のワイドショーで東京はニューヨークのような医療崩壊が起こる!と騒がれていました。実際にニューヨークは医学生や引退した医師なども動員して非常に混乱したようでした。アメリカでは感染者数もまだまだ増えているようですがニューヨークはどうなったのでしょうか?googleでNew York, COVID19と引くとニューヨーク保健局が公開しているページがありました。一緒に見てみましょう。

https://www1.nyc.gov/site/doh/covid/covid-19-data.page

213212人が確認されています。入院者数は55110人、18535人が死亡、4605人がCOVID-19が検出されていないが死亡原因の可能性がある。
ピークでは6000人を超える感染者数が出ています。7月1日は102人と東京都同じレベルですね。
入院者数は16人とかなり少なくなっています。
死亡者数は7人でした。
地域別に症例数や死亡率を示しています。ニューヨークと言えばマンハッタンです。地図真ん中に縦に長細いネズミ色の部分が見えます。これがセントラルパークです。その南側がマンハッタンですが意外にも感染者数などは少なめで周囲の貧困地区などが高いことが分かります。
これは10万人当たり何人が風邪症状や肺炎で救急室を受診したかのグラフです。年齢が高くなるにつれて受診率が高くなっています。最近では全年齢がほど一緒になっています。ピーク時にも0-17歳は低いですが、18歳以上は同じような形で高くなっていっています。
受診の結果、救急室から何人が入院になったかというグラフです。確実に年齢が高くなるにつれて入院率が高くなっているのが確認されます。
みなさんが一番関心があるかもしれない検査陽性率です。3日間の平均が示されているようです。 3月末から4月にかけては陽性率が50%を超えています。6月になってからは5%以下です。
検査数です。3万件以上も検査されている日があります。救急外来受診者数も減って、患者数も減っているにも関わらず右肩上がりなのはドライブスルー検査などで無症候者の洗い出しを行ったからでしょうか。
10万人当たりの年代別感染者数です。東京では夜の街感染が増えており若年者が多いとされています。ニューヨークでも18-44歳は2300人程度と18歳を超えると感染者数が急激に増えています。
死亡者数はどうでしょう。75歳以上が圧倒的に多いです。18歳-44歳はほとんど死んでいません。

いかがでしたか?違う政策、対策をとっているので東京とニューヨークの動きは異なっているのがわかります。ニューヨークは地図も作成していたり見やすいグラフになっていました。

感染者数が増え始めている東京では重症化しにくい若年者が多いから、、、と言っていますが高齢者に伝播していくと確実に重症者、死亡者が増えていきます。感染対策を行いクラスターを発生させないようにしましょう。

2020.07.04 |

東京の感染者が増えてきました

東京のコロナウイルス感染者数が増えてきました。梅雨や暑さ、紫外線で死滅するから、、、という意見もありましたが外れた格好です。私自身も夏場にかけては落ち着くのではないかと考えていたところもありました。都市部は人の多さや移動もそうですが、地下街や電車内など密閉空間となる場所が多いことも関係しているのかもしれません。

連日100人越えの感染者を見せていますが、これは10-14日前の感染者の数です。もちろん、PCRの検査数や対象者が3月4月と比べると広がったから陽性者数が増えているということもあります。しかし、着実に感染者数が増えていることも事実です。現在は数百人~千人規模での感染者がいるかもしれません。高齢者や基礎疾患がある人達が重症化リスクが高いですが、若年者が重症化しないわけではありません。

東京から広島に帰ってくる人や東京に旅行に行かれる人もいるかもしれませんが、十分に注意してください。

①できうる限り東京への渡航は控える。特に高齢者と生活している人。

②14日以内に東京から帰ってきた人は、なるべく自宅から出ずにマスク装着と手指手洗いをこまめに行う。検温などを行い異常があればすぐに相談する。

③14日以内に東京から帰ってきた人などと濃厚接触がある場合には体調変化に気を付ける。

これらのことが重要だと思います。また、東京などの都市部ではPCR検査が民間医療機関にも広がっており、保健所などを介せずに自費にはなりますが検査が行われています。広島県は行政との兼ね合いもあるのでしょうが、指定医療機関(公表されていないからよくわかりませんが)でないとできないようです。

そういったときにIgM抗体の測定は役立つかもしれません。当院でも必要であればIgM検査も行うことは可能ですのでご連絡ください。

2020.07.04 |

中国新聞に取り上げていただきました。

6月29日の中国新聞に当院の記事が掲載されました。限られた文章の中でしたが、分かりやすく伝えてくださった記者の方には感謝しています。

他にもたくさんのことをお話させていただいたので、ここでも挙げさせていただきます。

コロナウイルスが世羅で発生しなかったのは運が良かっただけと思っています。もちろん住民の方々の外出自粛などの努力も大きかったはずです。

東京では自粛が解除されて感染者数がじわじわと増えていっています。他国の経過をみてもロックダウンをしても感染者数をゼロにすることは難しく、このまま秋の再流行に突入する可能性が高いです。

以前に世羅町の方々と話した時に、花などの観光で町おこしをするんだ!と言っておられました。となると、今後もどうしても町外からの観光客の流入は避けられません。高齢者の方も多く、家族は広島市内や福山、関西で住まわれている方もいます。家族同士の交流でも町内に感染者が入ってくることがあるかもしれません。

感染者を出さないことを目標にするよりも、感染者が出たときに対応できる体制を整えていくことが今後の課題です。コロナが怖い、感染している人には近寄っちゃいけない、感染者が出たら外に出ちゃいけない、感染の可能性がある人がいたら隔離しなきゃいけない、と動いてしまうと偏見や差別につながってしまいます。

先日、コロナ感染者が未だ出ていない岩手県の家族のtwitterが話題になりました。父親に東京に住む息子が「そろそろ実家に帰ってもいいか?」と尋ねたところ、父親から「岩手県で初めてのコロナ感染者はニュースだけでは済まないから帰ってくるな!」となったそうです。

このやり取りの背景には、初めてのコロナ感染者には誹謗中傷や差別が待っているかもしれないということがあるのではないでしょうか?

全世界でこれだけ流行しており、終息することなく、スウェーデンの集団免疫獲得も成功していると言えない状況を見るとコロナウイルス感染は生活の一部となります。

感染者が多いと分かっているキャバクラやホストクラブに通うのは例外ですが、日常生活の中でかかってしまうのは仕方ありません。

コロナ感染者が出ても、観光客を受け入れられる体制は世羅町は整っていますとアピールしていくことも大事ではないでしょうか?世羅町役場と世羅町の医療機関で考えていかなければいけません。

コロナウイルス検査にも抗体検査、抗原検査、PCR検査があります。流行時期や症状の有無などで適切な検査や結果の解釈の仕方が変わってきます。住民の皆様もコロナウイルスのことをよく知って適切な対応を取り、感染者が出ても慌てない、過剰に反応しない地域を作っていきましょう。

捕捉になりますが、学校や施設などでコロナウイルスのことを知りたいなどがあれば相談いただければwebを使った相談会や少人数の勉強会など行いますので気軽にご連絡ください。専門はがんなので、そちらの相談ももちろん受け付けます。

2020.06.29 |