コロナウイルス関連
コロナの小児患者
外出自粛しているのに熱を出したり、咳が出ている子供がいます。
「外出自粛しているのにどこからウイルスが入ったの?コロナじゃないでしょうか?」と心配される親御さんが多いです。
外に出る機会がなくても、空気は無菌なわけではないので風邪ひいたりすることはありますよと答えるようにしています。コロナに関してはどうなのかを少し調べてみました。
日本で最初に小児例が確認されたのは北海道の兄弟でした。感染経路ははっきりとしていないようです。
5月4日の発表では0歳から19歳までの陽性者数は601人、重症者数は2人(0.3%)、死亡例は0人となっています。
海外からの報告がどうなのかをNEJMとJAMAに掲載されていた論文から見てみましょう。
イタリアの救急室を受診した小児100例のまとめが5月1日のNEJMに掲載されていました。0歳~18歳で救急室を受診してコロナウイルス検査陽性となった症例の年齢中央値は3.3歳と低め、感染経路が不明もしくは家族外からの感染が疑われる症例が55%と半数だったようです。よくある症状として発熱(37.6℃以上が54%)、咳(44%)、食思不振(23%、生後21か月未満の子供で良く見られた)ということです。酸素が低下した症例はわずか4%で人工呼吸器が必要とされた症例は9例だったそうです。症状が一切認められなかった無症状の患者は21%いたようです。重症例になったのは1例のみで死亡してしまった患者はいなかったようです。
Parri, N. et al. Children with Covid-19 in Pediatric Emergency Departments in Italy. New England Journal of Medicine (2020)
つづいてJAMAに掲載されていた、これまで論文掲載された小児例をまとめて解析したデータです。
1065人の中国とシンガポールから報告があった小児例が検討されています。発熱、空咳、倦怠感に加え、嘔吐・下痢の消化器症状を示した症例も散見されているようです。ただし、重症化例は1例のみで死亡例は報告されていません。
JAMA Pediatr. 2020 Apr 22. doi: 10.1001/jamapediatrics.2020.1467.
最後に日本小児科学会から出されている臨床学的特徴を一部抜粋します。
イタリアから出された集計では感染経路不明が55%でしたが、中国から出されている小児例に関しては家庭内感染が多くを占めているようでした。
これまでの報告だと、小児コロナ患者に共通しているのは①重症化する例は少ない②無症状例が成人と比較すると多い可能性がある③家庭内感染が多いかもしれないということです。
家庭内にコロナウイルス感染者がいて、子供が熱はないけど元気がない、食欲が減ってきているといった症状があれば検査対象となると思います。逆に子供だけに症状があり、保護者には症状がないといった症例では検査をせずに経過をみても良いのだと考えます(重症例は別です)。
2020.05.06 | コロナウイルス関連
放射線治療とコロナ
岡江久美子さんがコロナウイルス肺炎で亡くなられたことと関連して、放射線治療で免疫力が低下していたと報道するメディアや一部医療関係者がいます。しかし、早期乳癌の放射線治療は免疫を落とすようなことはほとんどありません。もしかしたら、放射線治療中、放射線治療前の患者さんで継続や開始をためらわられているかもしれません。早期乳癌で放射線治療を行わないデメリットははっきりとしています。一部のメディアなどに惑わされず、しっかりとがん治療を完遂してください。
放射線治療学会からも提言が出ています。
2020.04.25 | コロナウイルス関連
子供が・保護者がコロナに感染したら
瀬尾医院でも小児患者を診察しています。発熱があると親が真っ先に気にするのがコロナでないだろうか?です。今のところ、小児のコロナ感染ケースは軽症例が多いこと、保護者や保育園などの関係者が先にコロナ感染して子供が濃厚接触者となり陽性となることが多いなどの特徴が挙げられています。小児の発熱患者さんを診察するときにはこれまで以上に生活環境に注意を払いながら問診をしています。
では、保護者がコロナになって入院が必要な場合などにどうすればいいかが小児科学会から発信されていました。以下にリンクを貼っておきますのでご参照ください。
2020.04.24 | コロナウイルス関連
がんとコロナ
先日、日本臨床腫瘍学会のホームページにがん患者さんに向けて情報発信があったのでこちらでも紹介しておきます。
https://www.jsmo.or.jp/general/coronavirus-information/qa.html
岡江久美子さんがコロナウイルス肺炎で亡くなるというニュースが流れました。ショッキングであったと同時に、昨年行った早期乳癌手術と放射線療法による免疫力が低下していたためではないかという情報も流れました。がん治療中の患者さんにとっては他人事ではないでしょう。これだけで免疫力が低下していたと結論付けるには早いですし、できることは自分がかからないようにマスクと手洗いを心がけることです。ニューヨークのマウントサイナイ病院からコロナウイルスにかかったがん患者さんのデータが出てきていたので紹介します。
ニューヨーク州では5688人のコロナ患者のうち334人(6%)ががん患者さんでした。がん患者さんの致死率が高かったというデータが中国から出ましたが、28人しかがん患者さんがおらず不透明な点も多かったです。
334人の内訳ですが、57人が乳癌、56人が前立腺がん、23人が肺癌、18人が尿管癌、16人が大腸癌となっています。人工呼吸器が必要となる割合は1.89倍と高い傾向にありましたが死亡率は差がありませんでした。特に66歳~80歳台ではリスクが高かったようです。死亡率に関しては50歳以下はがん患者さんの方が高いですが、50歳以上だと低い傾向(統計学的には明らかではありません)があるという状況です。はっきりとがん患者さんの重症化率や致死率が高いという結論には至っていません。
抗がん剤治療を受けに病院に行くのも不安、かかった時には特別に重症化しやすいのではないか、、、と考えられている方も多いと思います。主治医と相談して、治療を遅らせても大丈夫なものなのか?予定通りにしたほうが良いのか?話し合ってください。一人だけでは決めないようにしましょう。
2020.04.24 | コロナウイルス関連
コロナウイルス濃厚接触とは(4月22日に改訂)
コロナウイルス感染者の数が増えるにつれて生じている問題があります。医療従事者や家族に対する偏見や接触を避けるような動きです。ここでは濃厚接触の定義を今一度振り返ります。
「濃厚接触者」とは、「患者(確定例)」の感染可能期間(症状出現の2日前)に接触したもののうち、次の範囲に該当する者である。
・患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(社内、航空機内などを含む)があった者
・適切な感染防護なしに患者(確定例)を診察、看護若しくは介護していた者
・患者(確定例)の気道分泌もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
・その他:手で触れることのできる距離(目安として1メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と15分以上の接触があった者
国立感染症研究所ホームページからの引用です。
医療者は適切な感染防護なしに発熱患者や疑い患者と接することは現状ではほとんどありません。コロナ検査が陽性になった人と同じ空間にいたからといって、その場にいた全員が濃厚接触者でもありません。外出を自粛していたとしても、どこからコロナウイルスが入ってくるかわかりません。コロナウイルス陽性患者はクラスター対策の一環として、行動や働いている場所全てが公表されます。 しかし、そこで働いていた人たち全てが濃厚接触者、そこにいた人と接したから濃厚接触者ではありません。正しくコロナウイルス濃厚接触を理解してください。自粛要請でイライラやストレスが溜まっているとは思いますが、皆で地域を守っていく意識を持ちましょう。
例)適切な感染対策(マスク、ゴーグルなど)をして陽性患者と接している。
→濃厚接触にはあたりません。
例)陽性患者と車の中で会話をしていた。
→濃厚接触にあたる可能性が高いです。
例)陽性患者が働いていた同じ部署の人(無症状)と接していた。
→これだけでは濃厚接触にはあたりません。
2020.04.19 | コロナウイルス関連