コロナウイルス関連
95%効果のあるワクチン?②
今日もワクチンに関するニュースが多く流れています。ファイザー、モデルナ社のワクチンは90%有効、アストラゼネカは70%と低い。ワクチンを打てば元の生活に戻って、コロナウイルスを気にしなくていい。そんな論調です。
私自身は、既存のワクチンはなるべく打ったほうがいいと考えていますし、HPVワクチンも早く男の子にも打てて9価ワクチンが早く広まればいいなと思っています。
アベマニュースでは、インフルエンザワクチンの効果は60%程度と低いのに接種を推奨されている。コロナウイルスワクチンは90%以上もあるんだからすごいともアナウンサーやコメンテーターが言っていました。前回の記事にも載せたように、95%有効というのは95%かからないというわけではありません。さらに岩田先生のコメントを踏まえてワクチンに関して勉強しなおしてみました。
ワクチンには麻疹やB型肝炎などのように一度抗体が付けば、感染可能性がほぼ無くなる感染症とインフルエンザのように毎年打たないといけないワクチンの2種類があります。
コロナウイルスワクチンはインフルエンザのように毎年打たないといけない可能性があります。効果がどれだけ持続するのかはまだ分かっていません。
理想的なワクチンの効果は
①体内でのウイルスの増殖を防ぎ発症しない
②感染力をなくし、他者に感染させない
この2つの条件が揃っているのが理想的なコロナウイルスワクチンとされます。前回も書きましたが、ファイザー社の効果をもう一度確認してみましょう。
ワクチン打った人は21769人、プラセボ(偽薬)を打った人も21769人
ワクチンを打った人でコロナウイルスにかかり症状が出た人は8人(0.036%)
プラセボを打った人でコロナウイルスかかり症状が出た人は162人(0.74%)
コロナになったかならなかったかでいうと、ワクチンを打った人の99.96%、プラセボだった人の99.23%がコロナウイルスにかかっていません。
では何が95%なのか?
単純に発症した患者さんの差の比率を出しています。(162-8)/162=0.950 95%
となるのです。これが前回の記事でも触れた相対危険度減少率です。
この数値が50%以上であればワクチンとして有効といわれることがWHOやFDAから言われています。
高齢者では発症者が少なかったから有望であるという論説も見ましたが、そもそも高齢者は現時点で3密を避けて、感染対策を気にしている人が多いと思います。欧米ではコロナが広がっていても、集会やデモが開かれています。そういった流行地などにおいては、高齢者の感染者よりも外出をしたりする若者の方が感染者数は当然多く、ワクチンを打てば発症率が下がるとなるかもしれません。
基本的な感染対策とワクチンのどちらが有効なのかを比べるのは非常に難しいところです。
②感染力はどうでしょうか?
コロナウイルス対策で苦慮するところが症状がない人が周囲に感染させることです。ファイザーもモデルナ社のワクチンも症状が出た人を調べているだけです。実は症状を抑えており本当の感染を分かりにくくしている可能性があります。最悪なケースとしては、ワクチンを打つことで症状が出にくくなるが、感染力を落としていなく周囲に感染者が増えてしまう。そういったことがあるかもしれません。もちろん、感染力が低下している可能性もありますが、そこを検証するためには第4相試験、つまり市場にワクチンが出回ってからの情報収集が必要になります。
これまでのワクチンが承認されるためには長期間かかったのに、、、と言われる理由の一つもここにあります。
インフルエンザワクチンはこれまでの長期間の成果の結果で、妊婦に打つと早産リスクが減少したり重症化を防ぐことが明らかであることが分かっています。
有効なワクチンが開発されて出回ることは喜ばしいことではありますし、良い結果が出て欲しいと思っています。ただ、ワクチンを打てば全部が解決する!今までの生活に戻れる!人類がコロナウイルスに打ち勝った!とならないことを報道していただきたいです。手洗い、うがい、マスク、流行地では気を付けるといった基本的なことを行いましょう。
2020.11.25 | コロナウイルス関連
95%効果のあるワクチン?
11月に入ってPfizerから95%効果があるワクチンが開発されたと発表がありました。
中国新聞にも大きく取り上げられていました。発症を防ぐ有効性が95%と書いてあります。他のメディアも同じような感じです。
Pfizerのプレスリリースを直訳したらたしかに有効性95%とあります。ワクチンを打ったら95%もワクチンを防げる、もしくは100人打ったら95人がコロナにかからない!と思いませんか?医学の世界には様々な有効性があります。
①相対危険度減少率(相対リスク減少率):Relative Risk Reduction ワクチンを打たなかった人に対して、ワクチン打った人では何%コロナの症状を抑えたかを示します。治療効果の差を出すときに良く使われます。プレスリリースから計算するとこれが95%でした。
②絶対危険度減少率(絶対リスク減少率):Absolute Risk Reduction ワクチンを打たなかった人のコロナ発生率とワクチンを打った人のコロナ発生率の差です。ワクチンによりコロナウイルスの症状が出ないのが、試験対象者全体のうち何%かを示します。これはなんとたった0.7%。。。
③治療必要数:Number Needed to Treat 1人のコロナウイルス発症を防ぐために何人にワクチンを打てばいいのかという数値。この数値が少なければ少ないほどワクチンの効果が高いことを示します。これは142人となりました。つまり142人に打ったらやっと1人がワクチンの恩恵を受けることができるということです。
44000人近くに打って170人しか発症者が出ていないため、この数値は今後変わってくる可能性が高いですが、95%という数値がどのような意味が持つものなのかはしっかりと捉えなくてはいけません。
追記になります。ちょうどこのブログを書いた日の翌日に、神戸大学の岩田健太郎先生が感染症は人にうつすかうつさないかなども重要なため、絶対危険度減少率や治療必要数を指標にしてはいけないという発信をされていました。時間が経過すればワクチンの効果が出てくるのかもしれないのですが、現時点で与えられた情報では何を指標にすればよいのかを少し勉強して書きたいと思います。
2020.11.22 | コロナウイルス関連
コロナウイルスの検査情報
久しぶりの更新になります。コロナウイルス検査が徐々に広がってきており、問い合わせも多いため書かせていただきます。私がインターネットで調べた結果のため多少の間違いはありますが、ご容赦ください。
まず、有症状・濃厚接触者の場合です。広島県内の多くの診療所、病院で現在は公費を使用して行うことができます。当院でもこれを採用しております。検査代金は公費で賄われますが、診察代や手技料、判断料などはかかるため数千円の負担となります。心配な方は近くの診療所に聞いてみても良いかと思います。
症状がない場合の自費PCR検査は広島県内では認められていません。有症状者の検査が優先されるためだそうです。
以下の病院・診療所では渡航者限定で自費で受けることができるようです。
渡航者で陰性証明書が必要な人たちへのPCR検査 (渡航者以外は認めておりません)
広島大学病院 渡航者外来、舟入市民病院 渡航者外来 福山市民病院 渡航者外来、おだ内科クリニック 渡航者外来
自費診療でPCR検査(団体優先)、有症状者は対象外
医療法人達磨会 井上病院グループ だるま検査センター
となっております。いずれも数万円かかることなので、そう簡単には繰り返し受けることは難しそうですね。
注意が必要なのですが検査方法です。渡航する国によっては唾液検体でのPCR検査は認めていない場合があります。鼻咽頭スワブでしか受け付けていない場合があるため確認しておきましょう。
ソフトバンクグループが法人向けに2000円という格安でPCR検査を行っていますが、陰性証明が出ない、陽性となった場合にどうすれば良いのかといった指導を受けれない不安はあります。
国立感染研究所などが合同で新型コロナウイルス感染症の検査指針を出したので、それぞれの検査の特徴と弱点を書いていきます。
検体の違い ①鼻咽頭ぬぐい液:インフルエンザで行う鼻に棒を突っ込む検査と同じやり方です。感染初期には鼻咽頭ぬぐい液が最も標準的で信頼性の高い検体となる。短所としては周囲へ飛沫を飛ばす可能性が高い(くしゃみをする)。 ②唾液:検出感度は鼻咽頭ぬぐい液と同等と言われており、周囲に飛沫を飛ばす可能性は低いため安全である。ただし、1~2mlの唾液が必要とされており結構大変である。唾液が出にくい人や高齢者、食後や歯磨きなどで結果に影響が出ることがある。検査前30分は口の中に何も入れないことが望ましい。
検査のタイミング 有症状者の場合:PCR検査が最も信頼度が高い。抗原検査は発症から2日目以降で用いることができる。 濃厚接触者:PCR検査が推奨される。
これからインフルエンザの流行期も併せてやってきます。当院ではどのような検査であっても、安全に行えるように検査室を別で建て、風邪症状の方はそこでインフルエンザと新型コロナウイルスの抗原検査を行い陰性であれば院内で精査という体制になります。質問などがあればいつでもメールフォームから問い合わせください。
2020.10.15 | コロナウイルス関連
新型コロナウイルス抗原検査、PCR検査導入
ホームページでお知らせしていましたが、抗原検査・PCR検査が導入されました。
抗原検査は自費となっていましたが、保険適応になっていることを確認できたため有症状の患者さんに関しては保険が使用できます。実費で2000円程度(検査代金のみ)かかります。抗原検査が陽性の場合にはPCR検査を確認のために行います。
抗原検査の利点としては30分で結果判定ができることが挙げられます。
無症状の患者さんに関しては抗原検査・PCR検査どちらも保険適応外となるためご相談ください。
2020.08.22 | コロナウイルス関連
COVID-19に対するステロイド
先月にステロイドが新型コロナウイルスに保険が通ったというニュースが流れていました。私たち医療関係者からすると、ステロイドは様々な病気・病態に対して使用しますし、新型コロナウイルスに保険適応と聞いてもピンときませんでした。実際に重症肺炎にステロイドを使用する場合もあります。免疫反応を抑えるため使用するかは賛否両論あります。新型コロナウイルスにも2月~4月の流行期には効果があるか分からなかったため、推奨はされていませんでした。有効だというデータが出たんだなと思っていたら今週のNEJMに論文が出ていました。
ちょっとびっくりしたのが、イギリスの入院患者さんの致死率です。26%にもなりICUに入室した場合には37%まで上昇しています。これを考えると日本の死亡率って低いと思われます。レムデシビルなどの薬はコロナウイルス検査が陰性になるまでの期間短縮の効果はありそうですが、致死率に関しては貢献しませんでした。
赤い線がステロイドを使用した患者さんで、黒い線が使用しなかった患者さんです。縦軸が致死率なので、下にある線の方が致死率が低い=有効となります。Aが全ての患者さん、Bが人工呼吸器をつけている患者さん、Cが人工呼吸器ではなく酸素を鼻やマスクを通して吸っている患者さん、Dが酸素投与をしていない患者さんになります。日本でいうとBが重症者、Cが中等症、Dが軽症者となります。A、B、Cではステロイドが下にあるので有効そうですが、Dではステロイドが上にきており、投与された人の方が致死率が高くなっています(有意差は出ていない)。この結果から、中等症以上の患者には有効と思われますが、軽症者には意味がないどころかもしかすると免疫力が低下して害になる可能性もあります。ステロイドはあくまで補助治療薬であり、コロナウイルスに対して効果があるわけではありません。適応も考えての投与が必要と思われます。
2020.08.20 | コロナウイルス関連