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COVID-19に対するステロイド

先月にステロイドが新型コロナウイルスに保険が通ったというニュースが流れていました。私たち医療関係者からすると、ステロイドは様々な病気・病態に対して使用しますし、新型コロナウイルスに保険適応と聞いてもピンときませんでした。実際に重症肺炎にステロイドを使用する場合もあります。免疫反応を抑えるため使用するかは賛否両論あります。新型コロナウイルスにも2月~4月の流行期には効果があるか分からなかったため、推奨はされていませんでした。有効だというデータが出たんだなと思っていたら今週のNEJMに論文が出ていました。

ちょっとびっくりしたのが、イギリスの入院患者さんの致死率です。26%にもなりICUに入室した場合には37%まで上昇しています。これを考えると日本の死亡率って低いと思われます。レムデシビルなどの薬はコロナウイルス検査が陰性になるまでの期間短縮の効果はありそうですが、致死率に関しては貢献しませんでした。

赤い線がステロイドを使用した患者さんで、黒い線が使用しなかった患者さんです。縦軸が致死率なので、下にある線の方が致死率が低い=有効となります。Aが全ての患者さん、Bが人工呼吸器をつけている患者さん、Cが人工呼吸器ではなく酸素を鼻やマスクを通して吸っている患者さん、Dが酸素投与をしていない患者さんになります。日本でいうとBが重症者、Cが中等症、Dが軽症者となります。A、B、Cではステロイドが下にあるので有効そうですが、Dではステロイドが上にきており、投与された人の方が致死率が高くなっています(有意差は出ていない)。この結果から、中等症以上の患者には有効と思われますが、軽症者には意味がないどころかもしかすると免疫力が低下して害になる可能性もあります。ステロイドはあくまで補助治療薬であり、コロナウイルスに対して効果があるわけではありません。適応も考えての投与が必要と思われます。

2020.08.20 |