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がん治療Q&A

拠点病院で手術をすべき?

先日のyahooニュースに大阪の調査で拠点病院の方が、がん治療の3年生存率が高いという報告がありました。
これは以前からも言われていたことでしたし、がん治療を集約化したいという国の制度上でも望ましい結果ではないでしょうか?

がん手術後の生存率 大阪府内の拠点病院と拠点以外の病院で差 | 医療 | NHKニュース

がん診療連携拠点病院の施設要件には年間手術件数が400件となっています。
広島県ではどのような病院があるのでしょうか?
厚生労働省のページから見ることができます。

都道府県がん診療連携拠点病院・・・広島大学病院
地域がん診療連携拠点病院(高度型)・・・広島市民病院、福山市民病院
地域がん診療連携拠点病院・・・県立広島病院、広島日赤、JA広島総合病院
呉医療センター、東広島医療センター、福山医療センター、三次中央病院
安佐市民病院、尾道総合病院

となっていました。想定していたよりも多かったというのが正直な印象です。私が今まで働いてきた病院もほとんどがリストの中にありました。

このニュースの元になった論文も見つけることができたので読んでみます。

2004年から2012年のデータのようです。集められた患者さんは15歳~85歳。
85歳以上は合併症が多く、予後規定因子が複数あるため除外されたようです。

手術部位、年齢、性別、ステージ、化学療法・放射線療法の有無を調整して解析しています。

縦軸が3年間の生存率、横軸が手術件数

年間250件を境にして、ほぼ直線が並行になっています。このことから年間250件以上の手術を行っている病院では成績はぼぼ一緒となります。がん拠点病院の施設要件が年間400件の手術数なのでこのデータからは十分な数と言えるのでしょう。

肺がん、大腸がん、胃がんでは差が大きく、乳がんなどでは差が出なかったとのことでした。

私はがん治療の集約化には大いに賛成しています。特に希少癌!は抗がん剤治療・放射線治療との組み合わせが重要になるので経験の有無で大きな差が出てきます。また、希少癌の治療開発は集約化されないと進みづらいです。手術可能、ボーダーラインの希少癌は広島県であれば1~2か所の病院に集約すべきと思っています。

では、この論文の疑問点を挙げていきます。
①がん患者の背景がもっと欲しい。
私もいくつかの拠点病院で腫瘍内科医として働きましたが、病院によっては糖尿病、COPD、心疾患など合併している患者さんはお断りするところもありました。それには様々な理由がありますが、手術件数が少ない地元の病院にしか頼ることができなかった、そこで何とかしたいと考えて治療しているケースも実際にはあります。
②周術期の抗がん剤治療のバラツキは?
術後3年間の成績は手術だけでなく、抗がん剤治療も非常に大きな役割を果たします。そこに関しての言及は今回の論文ではみられませんでした。標準治療がされているのかも気になるところです。
③ステージの評価は適切か?
特に食道がん、肺がんではステージII~III期のいずれかで大きく変わってきます。田舎の病院などでは造影CTで手術を決めるところもあれば、PET-CTなど複数の画像を用いて慎重に手術適応を決める病院などもあるでしょう。そこの統一も必要かと思いました。

どの状態の患者さんを拠点病院に積極的に紹介すべきなのかなどを更に掘り下げて知りたいところです。広島県のデータもあれば出してほしいな。

改めてリストの病院見てみると、ほとんどの患者さんはこのリストにある病院で手術しているよねという感想も持ちました。
リストにある病院が全てのがん種に対応しているわけではないですし、ここって拠点だったの?と知った病院もありました。

どの病院で手術するのが良いのか、、、拠点病院のそれぞれに強みがありますので主治医と相談してどこの病院で治療すべきかを決めるほうが良いと思います。場合によっては、手術だけでなく周術期の抗がん剤・放射線治療がどうなのか?腫瘍内科があるのかなども選ぶ際に気を付けないといけないです。

2022.03.09 | がん治療Q&A