がん治療Q&A
がん性疼痛と鍼灸
癌性疼痛に対する鍼灸治療
癌性疼痛は痛み止めや麻薬を使用しても完全に克服することがむずかしいのが現状です。
今回は鎮痛剤や医療用麻薬で痛みが取れず悩んでいる患者さんに対して情報提供を行います。2019年12月の論文にがん性疼痛に鍼灸療法の有効性が示された論文が出てました。
今回が初めてというわけではなく、以前から鍼灸療法ががん性疼痛に有効性があることは言われていました。国立がん研究センター中央病院にも数は少ないですが鍼灸外来がありました。今回発表されたものは1607件の鍼灸とがん性疼痛に関わる論文から17件を抽出して検証しています。通常の鎮痛薬に鍼灸療法を追加することにより、術後疼痛から終末期のがん性疼痛まで比較的良好な結果が出ています。
アメリカのMD Anderson Cancer CenterやMayo Clinicにもがん性疼痛に対する鍼灸療法のホームページがあります。その中からMayo Clinicホームページの10個の代替療法に関して記載します。
不安 | 瞑想、マッサージ、リラクゼーション |
倦怠感 | 運動、マッサージ、リラクゼーション、ヨガ |
吐き気・嘔吐 | 鍼灸、アロマセラピー、瞑想、音楽療法 |
痛み | 鍼灸、アロマセラピー、瞑想、マッサージ、音楽療法 |
睡眠障害 | 運動、リラクゼーション、ヨガ |
ストレス | アロマセラピー、運動、瞑想、マッサージ、ヨガ、太極拳 |
鍼灸:鍼灸療法が様々な効果があることは分かっているが、貧血や白血球数が少ないときには主治医に施行して良いか確認しましょう。
アロマセラピー:マッサージやリラックス中にアロマを炊くのもいいし、バスオイルを使用するのも良いです。特に吐き気、痛み、ストレスをとるのに有効です。
運動:適度な運動が倦怠感やストレスを和らげます。予後を延長、生活の質(QOL)の向上につながると言われています。
Hypnosis(催眠):深く集中した状態で暗示をかけることにより不安や痛みを軽くする効果があると言われます。あまり馴染みのないことなので変な感じがしますね。
マッサージ:血球が少ない時にはマッサージは避ける。放射線症を行った場所、腫瘍がある部位のマッサージは避けてもらうようにマッサージ師に伝えてください。強めではなく、皮膚や筋肉をほぐすようなマッサージをしてもうらようにしましょう。
瞑想:ポジティブシンキングを迷走状態で行うことによってがんの不安やストレスを軽減します。催眠効果と似たような状況かもしれませんね。
音楽療法:音楽療法士という専門家がいます。日本ではなじみがまだまだありませんが、吐き気・嘔吐に効果があると言われています。
リラクゼーション:精神を落ち着かせ、脱力することで緊張状態からリラックスした状態にもっていきます。
太極拳:とてもゆっくりと深呼吸をしながら体を動かします。負担も少なく推奨できる運動の一つです。動きで痛みが出るときには辞めておきましょう。
ヨガ:ストレッチと深呼吸を組み合わせており、有効な運動の一つです。
以上が10個の代替療法です。
いずれの治療も単独ではなくあくまで鎮痛剤や医療麻薬に追加で行うことが重要です。
主治医とも相談して行いましょう。
He Y, Guo X, May BH, Zhang AL, Liu Y, Lu C, et al. Clinical Evidence for Association of Acupuncture and Acupressure With Improved Cancer Pain: A Systematic Review and Meta-Analysis. JAMA Oncology. 2019.
2020.01.23 | がん治療Q&A