アクテムラとコロナウイルス
関節リウマチに使用されるアクテムラという薬をニュースやワイドショーで聞いた方も多いかと思います。
コロナウイルスに感染すると全身の炎症反応が強く発現(サイトカインストーム)して全身臓器を傷つける。それを防ぐために炎症を抑えるアクテムラ(抗IL-6抗体薬)で治療ができる可能性がある。という理論があります。6月20日のLancetという雑誌にアクテムラの論文が出ていたので紹介します。
新型コロナウイルス感染患者を28人のアクテムラを使用した患者さんと23人のアクテムラを使用していない患者さんに分けて比較しています。すべての患者さんがクロロキンとアジスロマイシンという薬を投与されています。クロロキンはマラリアの薬で効果がないことが発表されて承認が取り消されました。アジスロマイシンは日本でも非定型性肺炎などに使用される抗生剤です。
重症患者さん(低酸素、肺炎像あり、CRP>3 or フェリチン>400)に対してアクテムラが投与されています。
アクテムラが投与された患者さんの方が人工呼吸器などを使用している重症患者さんが多いにも関わらず、アクテムラを使用した患者さんが回復するまでに6.5日、アクテムラを使用しなかった患者さんが回復するまで7.0日と半日だけ回復期間が早くなっています。ただし、統計学的な有意差はありません。人工呼吸器が必要だった患者さんに関しては8.0日 vs 13.0日と5.0日間早く回復しているのが分かりました。
死亡者数に関しては差がありませんでした。この結果から重症患者に関しては、アクテムラを使用することが適切である可能性があります。ただし、患者さんの数が少なかったり、ランダム化比較試験でないこと、アクテムラが投与された患者さんが比較的若いなどの注意点があります。
東京では連日50人を超えるコロナ陽性患者さんが出ていますが、重症患者さんがどれだけいるのかは分かりません。日本では患者さんの数が少なく臨床試験が進まなくなっています。アメリカやブラジルなどの国での治験結果を待っています。
2020.06.27 | コロナウイルス関連