緊急事態宣言① コロナとインフル
関東、関西、九州の一部に非常事態宣言が発令されました。今回の宣言に関しては様々な意見がネットやSNSでは散見されます。
コロナウイルスはインフルエンザと一緒の風邪、日本の病床数は世界一なのに何故医療崩壊が起こるのか?私立病院がコロナウイルス患者を受け入れないからこういうことになる。。。など様々です。4月に緊急事態宣言が出たときに私は東京に住んでいました。あの時には、銀座や新宿などから本当に人がいなくなっていました。病院・クリニックからも患者数が激減し、つい先日まで1日で100人以上受診していたクリニックで30人も来院しないなんとことも経験しました。
最近気になって読んだ論文などを合わせて私なりの意見を書こうかと思います。
①コロナウイルスはただの風邪、インフルエンザは毎年もっと死んでいる。
医師になって10数年とまだまだ若手~中堅です。離島から東京のど真ん中にある総合病院まで比較的幅広く働いてきました。インフルエンザも毎年いやになるほど診療して、シーズンになると同僚たちと「病院窓口にインフルエンザキットとタミフルの自販機を置けばいいのに。」と冗談を言っていたこともありました。しかし、集中治療室に何人もインフルエンザ陽性の患者さんが入室しているなんてことはありませんでした。たまにいるとしても、慢性閉塞性肺疾患や心不全などの方がインフルエンザに感染することで持病が悪化したため入室という間接的な影響のほうが多かったです。
コロナウイルスとインフルエンザウイルスを比較するのは日本だけでなく、おそらく世界共通なんだろうなと感じたのがBMJとLancetに出ていた2つの論文でした。今回はBMJのものを掲載します。
データの中心はアメリカのVeterans hospitalからのものです。Veteransというのは退役軍人のことで、アメリカでは退役軍人には手厚い医療が提供されていると聞いたことがあります。入院を要した12676人のインフルエンザ患者と3641人のコロナ患者をまとめています。
腎機能障害、透析、敗血症、昇圧剤使用、心筋炎などほとんどの合併症がコロナウイルスのほうが数倍起こり訳すなっています。Adjusted ORというところがコロナウイルスのほうが〇倍高いということになります。
死亡率も約5倍、人工呼吸器が必要になる人も4倍、ICU入室率も2倍リスクが高くなっています。
もっと分かりやすくグラフにしたものです。上から100人当たりの死亡者数、100人あたりの人工呼吸器使用数、100人当たりのICUへの入室数。いずれもオレンジ色のコロナウイルスのほうが高いです。
左側のグラフがコロナ100人当たりの死亡者数になります。薄い黄色ほど少なく、黒くなると多くなります。65歳以下は合併症があっても死亡数はすくなくなっていますが、年齢が高くなるにつれて黒くなっています。特に腎不全がある患者と認知症のある患者で黒くなっているのが分かります。右側はインフルエンザと比較してのコロナ感染者の超過死亡数となっています。65歳以下でも黄色ですが、インフルエンザよりはいずれも増加しています。
若い人にとっても決してインフルエンザと一緒ではありません。欧米と日本では状況が違うと言われるかもしれませんが、現場の人間からするとインフルエンザとは同列に語れないことは明らかです。BMJ、Lancetのデータもそれを示しています。若い人にとっては確かにインフルと同等の風邪かもしれませんが、高齢者や基礎疾患がある人に関してはインフルエンザよりも凶悪であることは確かです。同居している家族や周囲の大事な方々を守るためにも感染してしまう確率が高くなる行動は控えましょう。
2021.01.14 | コロナウイルス関連